電気代全体の中で、最もボリュームの大きい部分が「従量料金」(電力量料金)です。基本料金は毎月一定ですが、従量料金は使った電気の量に応じて変わります。水道代が使った水の量で決まるのと同じように、電気も使った量に応じて課金される仕組みです。

ただ、この従量料金の計算方法は1つではありません。使えば使うほど高くなる「3段階逓増制」から、使用量に関係なく単価が変わらない「一律単価」、さらに時間帯や市場価格に連動するプランなど、様々な計算方法があります。ここでは、電力業界27年の経験を持つ当サイト運営者が、5つの従量料金パターンを、中学生にもわかるレベルで解説します。

従量料金とは「使った量 × 単価」

従量料金の基本的な計算式は、とてもシンプルです。

従量料金 = 使用量(kWh)× 単価(円/kWh)

「kWh」(キロワットアワー)とは、電気の使用量を表す単位です。1kWhは、1,000Wの家電を1時間使った量に相当します。例えば、ドライヤー(1,000Wの機器)を1時間使えば1kWh、30分使えば0.5kWh、2時間使えば2kWhです。

単価は電力会社やプランによって異なりますが、一般的には1kWhあたり25円から40円の範囲です。ただし、プランの種類によって、この単価の決め方が変わってきます。

従量料金の計算式の図解
従量料金 = 使用量(kWh) × 単価(円/kWh)

最もポピュラーな「3段階逓増制」

日本の電力会社の大多数が採用しているのが「3段階逓増制」です。使用量が増えるにつれて、1kWhあたりの単価が段階的に高くなる仕組みです。

東京電力EPの「従量電灯B」を例に説明します。

もし1ヶ月に300kWh使った場合、従量料金は以下のように計算されます。

計算例:月間300kWh使用した場合

第1段階:120kWh × 29.80円 = 3,576円
第2段階:180kWh × 36.40円 = 6,552円
第3段階:0kWh × 40.49円 = 0円
合計:10,128円

この3段階逓増制がなぜ採用されているかというと、政策的な理由があります。必要最小限の電気は安く使えるように第1段階の単価を低く設定し、無駄な大量消費に対しては割高な単価を課す仕組みになっています。これは省エネルギー政策の一環です。

ただし、同じ3段階逓増制でも、電力会社によって単価が異なります。特に第2段階と第3段階で差が出ます。以下は東京エリアの主要企業の比較です。

電力会社 第1段階
0〜120kWh
第2段階
120〜300kWh
第3段階
300kWh超
東京電力EP 29.80円 36.40円 40.49円
ENEOSでんき 29.80円 34.85円 36.90円
idemitsuでんき 29.80円 34.76円 37.10円
東京ガス 29.70円 35.69円 39.50円
CDエナジー 29.90円 35.59円 36.50円

第1段階はほぼ同じですが、第2段階以降では2〜3円の差が出ています。月間300kWh使う家庭なら、この差は年間で数千円の違いになります。

3段階逓増制のグラフ
3段階逓増制では、使用量が増えるにつれて単価が上がります

一律単価のプラン — シンプルだけど得かどうかは使用量次第

3段階逓増制ではなく、使用量に関係なく同じ単価で課金するプランもあります。これを「一律単価」型と呼びます。

代表的な例として以下のプランがあります。

一律単価の最大のメリットは、計算がシンプルで、使用量が増えても単価が上がることがない点です。しかし、これが得かどうかは「自分の使用量」によって変わります。

例えば、月間150kWhの使用量の家庭を考えます。

月間150kWh使用時の比較

【東電(3段階逓増制)】
120kWh × 29.80円 + 30kWh × 36.40円 = 4,584円

【ONEでんき(一律28.80円)】
150kWh × 28.80円 = 4,320円

→ ONEでんきが264円安い

一方、月間350kWh使う家庭はどうでしょう。

月間350kWh使用時の比較

【東電(3段階逓増制)】
120kWh × 29.80円 + 180kWh × 36.40円 + 50kWh × 40.49円
= 3,576円 + 6,552円 + 2,024円 = 12,152円

【ONEでんき(一律28.80円)】
350kWh × 28.80円 = 10,080円

→ ONEでんきが2,072円安い

使用量が多いほど、一律単価プランが有利になることがわかります。逆に使用量が少ない場合(例えば月100kWh以下)なら、東電の第1段階(29.80円)が最安になる場合もあります。

使用量ごとの料金比較グラフ
プランの得不得は使用量によって変わります

時間帯別プラン — 昼と夜で単価が変わる

オール電化の家庭向けに、「昼間は高い、夜間は安い」という時間帯別の単価を設定しているプランがあります。

東京電力の「スマートライフS」を例に挙げます。

このプランは、エコキュートという「深夜に沸き上げる電気温水器」が普及している家庭向けに設計されています。深夜に電気を使うことで、安い夜間料金を活用できるわけです。

時間帯別プランが得かどうかも、「自分の生活パターン」次第です。在宅ワークで昼間の電気使用量が多い人が、このプランを選ぶと、逆に割高になる可能性があります。

時間帯別の料金イメージ
時間帯別プランでは昼間と夜間で単価が異なります

定額制プラン — 一定量まで「使い放題」

使用量に応じた課金ではなく、「この量までは定額」という仕組みのプランもあります。携帯電話のデータ定額プランと同じような考え方です。

代表的な例を2つ紹介します。

定額制の魅力は、使用量が少なくても定額を払う必要がある代わり、その範囲内なら制限なく使える点です。ただし、実際にはほぼ使わない人には割高になります。

定額制の損益分岐点:東電くらし上手S の場合

定額3,670.40円 ÷ 120kWh = 1kWhあたり30.59円相当

→ 120kWh以上使う家庭なら、東電の通常プラン(第1段階29.80円 + 第2段階36.40円)より安い可能性がある
→ 120kWh未満しか使わない家庭なら割高になる

定額制の仕組みを示すグラフ
定額制は一定使用量までなら割安、それ以上は段階的に値上がります

市場連動型 — 30分ごとに単価が変わる

新しいタイプのプランとして、市場連動型があります。電力取引市場(JEPX)の30分ごとの価格に、従量料金が連動する仕組みです。

Loopでんきが代表的です。この場合、固定部分(託送料金等)は決まっていますが、電気そのものの費用は市場価格に左右されます。

このプランは「安い時期に大量に使えば得になる可能性がある」という特徴があります。一方、電気代が高騰する時期は支払額も増えるため、家計管理が難しくなるデメリットもあります。詳しくは他の記事で解説しているため、ここでは「従量料金の中に市場価格が組み込まれている」ことだけ押さえておきましょう。

市場連動型の価格変動イメージ
市場連動型では30分ごとの市場価格に従量料金が連動します

注意:単価だけで比較してはいけない理由

ここまで「従量単価」を基準に比較してきましたが、実は重要な落とし穴があります。見かけの従量単価と、実際の支払額が異なるプランがあるのです。

シン・エナジーやオクトパスエナジーなど「独自燃調方式」を採用しているプランの従量単価を見ると、一見すごく安く見えます。

東電の第1段階(29.80円)と比べると、10円近く安く見えます。しかし、これは「罠」です。このプランは、燃料費調整額の計算方式が完全に異なるため、単純比較ができません。最終的な支払額は、他の要素が大きく影響します。

詳しくは「燃料費調整額の仕組み」や「電気代の透明性」の記事を参照してください。単価だけで電力会社を選ぶのではなく、燃調の計算方式まで理解した上で比較する必要があります。

まとめ

電気代全体に占める従量料金は、基本料金の3〜5倍以上になることも珍しくありません。そのため、従量料金の計算方法を理解することが、効果的な節約につながります。

3段階逓増制、一律単価、時間帯別、定額制、市場連動という5つの計算方法があり、自分の使用パターンに合ったプランを選ぶことが重要です。使用量が少ない人は第1段階の安い単価を活かせるプランが最適ですし、大量使用の家庭なら一律単価や定額制の方が得になる場合があります。

次のステップとして、「燃料費調整額」の仕組みを理解すると、さらに正確な比較ができるようになります。


著者について

このサイトは、電力業界で27年の実務経験を持つ、第一種電気主任技術者(電力系統制御)が運営しています。発電・送配電・小売事業の経験を踏まえ、複雑な電力制度を「一般消費者にもわかるレベル」で解説することをミッションとしています。

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