市場連動型プランとは? — 30分ごとに料金が変わる電気の仕組み

電気代は毎月固定と思っていませんか。実は電気にも「卸売市場」があり、そこの価格に連動して料金が30分ごとに変わるプランが増えています。「市場連動型プラン」と呼ばれるこのプランは、安い時は従来型より大幅に安くなる一方で、高騰すると電気代が跳ね上がるリスクもあります。ここでは、市場連動型プランの仕組みをわかりやすく解説します。

JEPX(日本卸電力取引所)とは — 電気の「卸売市場」

株式市場では、企業の株式が自由に売買されます。電気の世界にも同じような「市場」があり、それが「JEPX(日本卸電力取引所)」です。発電会社が電気を売り、小売電力会社(みなさんと契約している電力会社)がそこから電気を買います。

JEPXの最大の特徴は、価格が30分単位で変わることです。株式市場が株価を常に更新するように、JEPXは日中24時間、30分ごとに電気の価格を更新しています。夜間や春秋の晴れた日は電気の需要が少なく、価格は3〜5円/kWh程度に下がります。一方で、夏の夕方(エアコンが大量に動く時間帯)や厳冬の朝は、電気不足で価格が30〜50円/kWh を超えることもあります。

需要と供給で価格が変わるのは、株式市場とまったく同じ仕組みです。「電気が足りない」と予想される日は売り手(発電会社)が値段を上げます。買い手(小売電力会社)も「今買わないと割高になる」と予想したら、少し高くても買う。結果、価格は急騰します。

過去には、JEPXで異常な価格上昇が起きたことがあります。2021年1月、全国的な寒波で電気需要が急増し、JEPX価格は一時250円/kWh を超えました。供給が追いつかず、「買いたい」という注文が殺到したためです。このような変動が起きるため、市場連動型プランの利用者の中には、予想外の高い電気代を支払う人も出てきたのです。

JEPX価格のトレンド図
JEPX価格は季節や時間帯により大きく変動します

市場連動型プランの計算式 — 損失率とマークアップの仕組み

市場連動型プランの料金は、JEPXの30分ごとの価格に、さらに複数の上乗せ分を加えて計算されます。最も詳しく公開しているLooopでんきの「スマートタイムONE」を例に、その仕組みを見てみましょう。

計算式:
30分ごとの料金(円/kWh) = JEPX30分値 ÷(1 − 損失率) × 1.1 + 固定従量単価

この計算式の各要素を分解してみます。

① JEPX30分値
JEPXの取引所で決まった価格です。時間帯と季節で大きく変わります。

② ÷(1 − 損失率 6.9%)
「損失率」とは、電線を流れる途中で失われる電気の分です。100kWh を送り出すと、送配電ロスのため、契約者に届くのは93.1kWh になってしまいます。そのため、取引所から購入する電気は、最終消費量よりも多く買う必要があります。100kWh 分を家に届けるには、実は 107.4kWh 分を発電所から買わなければならないわけです。(100 ÷ 0.931 = 107.4)

③ × 1.1
消費税10%分です。ほかの全商品と同じように、電気にも消費税がかかります。

④ + 固定従量単価 13.97円/kWh
これは毎月変わらない基本的な費用です。Looopの場合、サービス料金 7.00 円と送配電網の使用料(託送従量料金)6.97 円が含まれています。

では、実際に計算してみましょう。JEPX月間平均が10円/kWh だった月を想定します。

例1:JEPXが10円/kWh の月
10 ÷ 0.931 × 1.1 + 13.97 = 11.81 + 13.97 = 25.78円/kWh

例2:JEPXが25円/kWh の月(冬季や夏季ピーク時)
25 ÷ 0.931 × 1.1 + 13.97 = 29.54 + 13.97 = 43.51円/kWh

30分ごとに計算されるため、実際にはこの「平均値」はありません。毎30分、異なる価格で課金されます。安い深夜は15円/kWh 程度ですが、高い時間帯は70円/kWh を超えることもあります。

市場連動プランの料金計算図
市場連動型プランの料金は複数の要素から構成されています

楽天でんきなど「間接的な」市場連動 — 月次調整型

Looopでんキは「直接型」の市場連動ですが、別のアプローチで市場連動を実現している企業もあります。楽天でんきの「プランS」がその代表例です。

楽天でんきの場合、基本料金は0円で、固定従量単価は36.85円/kWh で固定されています。しかし、毎月「市場価格調整単価」という変動するパラメータが加わります。この調整単価の計算根拠は、JEPXの月間平均価格に基づいていますが、詳しい計算式は開示されていません。

つまり、楽天でんきの利用者は、月ごとに料金が変わる仕組みは共通ですが、「具体的にどのように計算されているのか」を完全には知ることができないのです。これが「間接的」な市場連動と呼ぶ理由です。

東急でんきの「ライフフィットプラン」も同様で、基本料金0円、固定単価14.66円/kWh に加えて「JEPX価格 + 手数料0.03円」という市場連動部分を加えています。固定部分がしっかり大きいので、JEPX の変動が電気代に与える影響は、Looopほど劇的ではありません。

市場連動型と固定型の料金比較
市場連動型と従来の固定単価プランの比較

市場連動型のメリットとリスク — 「安い時」と「高い時」の振れ幅

■ メリット
市場連動型の最大のメリットは、電気の価格が安い時期に大幅に節約できることです。春と秋(需要が少ない季節)、特に深夜や早朝は、JEPX価格が3〜5円/kWh にまで下がります。この時間帯に電気を使えば、固定従量を含めても15〜20円/kWh 程度で利用できます。対比として、従来の大手電力会社の従量電灯プランは、25〜30円/kWh 程度なので、市場連動型の「安さ」がわかります。

蓄電池やEV(電気自動車)を所有している人なら、電気が安い時間帯に充電し、高い時間帯は使わないという戦略が可能になります。この柔軟性が最大の利点です。

■ リスク
一方で、市場連動型には相応のリスクがあります。2021年1月の寒波時、JEPXが250円/kWh に跳ね上がった時、Looopの利用者は、その時間帯の電気代が270円/kWh を超えることもありました。年1回の電気代請求が、予想の5倍、10倍になることも起こりえるのです。

2022年のウクライナ危機でも、エネルギー価格が世界的に急騰し、日本のJEPXも影響を受けました。「いつ価格が上がるか」を正確に予測することは、プロの電力トレーダーでも困難です。

市場連動型に向いている人、向いていない人

■ 向いている人

■ 向いていない人

市場連動型プランは、電力の「株式投資」に近い側面を持っています。安い時に「買い」、高い時は「売らない(使わない)」という判断が求められるのです。

まとめ:市場連動型 = リスク・リターンのある電力プラン

市場連動型プランは、JEPX(日本卸電力取引所)の30分ごとの価格に連動して、電気料金が変わるプランです。安い時は従来型より大幅に安くなりますが、高い時は数倍の価格になるリスクもあります。

Looopでんきは「直結型」で計算式を完全に開示し、損失率やマークアップを明確にしています。一方、楽天でんきや東急でんきは「間接型」で、固定費の割合を大きくすることで、変動幅をマイルドに抑えています。

市場連動型への切り替えを検討する際は、自分の生活パターンと電気の使用時間が合致するか、予想外の値上がりに対応できるか、を冷静に判断することが大切です。電気の「買い時・売り時」を意識できる人にとっては、大幅な節約の機会となるでしょう。

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